この世界の片隅ニュース

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電子コミックスが紙より売れてる。いい時代!でもね…

電子コミックスの販売額が、紙の単行本を初めて上回ったらしい。

 

www.yomiuri.co.jp

 

いくつかデータを見てみると、読まれている漫画自体は一緒で、単純に出力媒体が違うってことじゃなく、そもそも読まれている漫画が違うみたいだ。

 

アプリの電子コミックスはエログロ?

もちろん、これだけじゃないんだけど。出版社が出している漫画では出来ないエロやグロさが読めるのが魅力らしい。分からんではない。ただ、これだけじゃいずれダメになるだろうな。私は全部の電子コミックスを読んでるわけじゃないし、全アプリをダウンロードしているわけでもない。純粋に作品として評価されているものもあるかもしれない。ただ、出版社がやれないことのすき間を縫うだけじゃつまらない。だって、仮に出版社がエログロ表現をやれるようになったら駆逐されるだけだから。後続が先行を抜かす場合、先行者のやってないことをやるのは当然だが、それが「やれない」ことなのか、「やれるけど、あえてやってない」ことなのかを見抜くのは結構大事だと思うのよね。

 

電子コミックスは文化足り得るのだろうか

文化という言葉は大げさかもしれないが、少なくとも日本の漫画は世界に誇れる文化だ。昔も、今も。では、電子コミックス市場がもっと成熟すれば文化になるのだろうか。その可能性を妄想したい。

 

紙より圧倒的な低コスト

例えばピッコマ。課金制だが、待てば無料で続きが読める。時間を金で買うシステムだ。人によって差は出るが気になったものは課金して一気に読めるし、そうでもないものは放置して帰りの電車で読めばいい。学生の懐事情にも優しい。こういう課金システムに批判的な声もあるが、私はポジティブにとらえている。だって紙だって買わなきゃいけないんだし。あと置く場所に困らないのも大きい。紙ってかさばるから。

 

誰でも簡単にアップできる=才能が発掘できる

ネットの普及で誰もが簡単に発信できるようになった。昔は出版社に漫画を持っていてもボツにされれば誰の目にも触れることがなかった。今ならネットにアップして、Twitterで告知すれば多少は見てもらえる。面白ければ広がっていく。いい時代だ。

 

 

編集がいない

これこそが最大の障壁だ。編集って一般の方が思う以上に大事な仕事。

漫画も小説も、編集が悪いと質が落ちる。売上も下がる。

「重版出来」という漫画、ドラマがあったがまさにあれ。編集者は漫画の方向性もキャラクターも作者と一緒に考える存在。(まれに、ワンピースの尾田栄一郎さんみたいな人がいる。彼は編集者に口は出させないらしい。でも、尾田さんは天才だからね。例外。一握りの人気漫画家の中のさらにトップしかそんな存在にはなれません)

作者が考えた面白いことを理性を持ってみんなが分かるように翻訳する。時には翻訳をせず、荒々しい状態で世に出す。この判断と作業をするのが編集のお仕事です。私も少し編集の仕事を手伝ったことがあるが、優秀な編集者さんって本当に理性的だし、よくものを知っている。作者が情熱と本能だとすれば、編集者は情熱と理性だろうな。

 

誰でも簡単にアップできる=才能が発掘できると書いたが、実はこれは間違い。だって個人でやっても編集がいないんだもの。尾田栄一郎みたいな天才以外は一人でやって面白くてみんなに読んでもらえる作品なんて作れません。

 

狭いコミュニティだけにウケればOK!?ならいいだけど

狭いコミュニティってのは悪い意味じゃない。むしろ、これからのネットコミュニティは確実に狭いほうに行くはずので、むしろ時代には合っている。例えば、拷問漫画が大好きなコミュニティがある。この人達は拷問系じゃないと読んでくれない。でも拷問系であれば必ず金を出してくれる。だったら、この人達に向けて拷問シーンばっかりの漫画を書き続けたっていい。それで自分の食い扶持くらいは稼げる。好きなことで生きていくだ。

 

でも編集って人が入った時にこの図式は崩壊する。なぜなら、編集者の食い扶持も稼がなきゃいけないから。作者だけじゃダメ。2人分、もしかすると経理の人も含めて3人分は稼がなきゃいけないかもしれない。この時、とるべき方法は3つ。

  1. 消費者の単価を上げる。
  2. 拷問という市場を広げる。
  3. もっとマスが取れる市場で勝負する。

 

1は個人でも出来るが相当難しいだろう。500円だったものが1,000円になっったら急に客は減るだろうし。2と3は個人じゃ無理。市場を広げるには作品の中身を大幅に変えなきゃいけなし広告だって必要。3は言わずもがな。

 

個人で発信するだけでは文化にはならない

個人が発信し儲けるためにはターゲットを狭くしなきゃいけない。広かったら既存のマスには勝てないから。でも狭くしたら世界に発信する文化になるのは難しい。それこそ100年に一人の天才を待つしかない。キセキ待ちだ。才能をキャッチアップし、世に出す編集者が必要だ。個人が発信するメディアが増えた分、優秀な編集者こそが今一番求められている人材なのかもしれない。