オフライン翻訳機「ili」の可能性
iliという翻訳機が話題だ。
大きさはwiiのコントローラーくらい。簡単に特徴を説明しよう。
- オフラインで使える
- 日本語→英語、中国語、韓国語に翻訳できる
- 双方向での翻訳は出来ない(機種によって英語→別言語は出来る)
- 翻訳スピードが早い
- 観光に特化した翻訳機であるため、固有名詞は弱く、ビジネスでは使えない
機能を制限するという凄さ
使ってみると分かるが、案外翻訳できないことが多い。長い文章はダメだし、和製英語、和製中国語も認識されない。
しかし、それでもiliは今の時流に合わせた素晴らしい製品だと断言したい。
なぜ、機能を制限したか。それはオフラインで使えることと、翻訳スピードを上げることに特化したからだ。
相互翻訳、観光以外の言葉はオンラインでないと不可能
相互翻訳をili内部のコンピューターだけで実現するのは難しい。となると、一度音声データを基地局に飛ばす必要がある。そこで翻訳をし、iliに戻す。固有名詞も大量にインプットするのは難しいため、基地局に飛ばす。
これでは翻訳スピードが落ちるし、wifi環境のない海外では全く使えない。
なので、機能を制限した。
また、相互翻訳について面白いことが書いてあった。なんでも、見知らぬ海外の人にiliを向けて話してもらうことが難しいんだそうだ。初めは相互翻訳も実装してたらしいが、相手にiliを向けることはほとんど無く利用頻度はかなり低かった。だったら無くていいじゃないかって判断したそうだ。
テクノロジーは進化するが人は進化しない
以前、AIの研究をする人と話したことがあるが、今、AIやテクノロジーが出来ないことは数年後までに全てクリアできると言っていた。
しかし、「人は進化しないので、テクノロジー全てを使いこなせない。だから人に合わせて、あえて機能を制限したものの方が使いやすい」らしい。
iliを例にとれば、相互翻訳を人は使いこなせない。もちろん、ウェアラブル翻訳端末を全世界の人がつければいいんだろうが、少なくとも現段階では難しい。
iliは今度のトレンドの象徴になる?
AIやテクノロジーの機能をどう制限するかが今度の製品開発のカギになる。有名な話だが炭酸印象のファ○タ。オレンジとグレープ味があるが、違うのは色とフレーバーだけで味は全く変わらない。一度目隠しして飲んでみてほしい。全く分からなかいから。舌の味覚って機能は実はかなり限られている。辛いとか甘いとかしょっぱいとか。そのくらい。「味」を決定的に定義するのは視覚と嗅覚だったりする。
では、味を判別する製品を作る時どうするか。味覚を感じるテクノロジーをいくら開発しても人間がそれを感知できないのであれば意味がない。だって、そこで味を半ベルしてないんだもの。視覚と聴覚のテクノロジーをミックスすることでようやく人が何を感じるかが分かるわけだ。五感の一つ一つが何が出来て何が出来ないのか。人のレベルに合わせたテクノロジーこそが求められている。
テクノロジーは万能になるかもしれない。でも人間は万能にはなれない。
技術開発は進む。同時に人は何が出来て何が出来ないかの研究が急ピッチで進むだろう。そして、それこそが人の生活を便利に豊かにするのかもしれない。iliからはAIやテクノロジーの「今」を感じられる気がする。